買収直後からコロナ禍で成長が鈍化、毎年多額の赤字垂れ流し。26年も前年と同規模の赤字なら債務超過に。
2026年6月号 LIFE

ゴディバ新丸ビル店(HPより)
最近なにかと話題のアジア系投資ファンド「MBKパートナーズ」。工作機械大手「牧野フライス製作所」がニデックに同意なき買収を仕掛けられたところ、ホワイトナイトとして颯爽と登場したが、政府が牧野フライスのもつ技術や情報は軍事転用リスクがあると判断してMBKに子会社化の中止を勧告し、撤退を余儀なくされたのは記憶に新しい。
ただ、昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)と三菱マテリアルのアルミ事業を統合した「アルテミラ・ホールディングス」(東京都文京区)の買収計画はこのほど外為法の審査をパスしたという。買収総額は1300億円にのぼる。
MBKは韓国系米国人のマイケル・ビョンジュ・キム氏がカーライルから独立して2005年に設立した、日中韓を中心に投資するPEファンド。本拠地は香港で、ソウル、上海、北京、東京にオフィスがある。運用残高は足元で330億ドル(5兆2000億円)に達するという。
実はそのMBKの数ある大型投資案件のうち、ピンチに陥っているとささやかれているのが高級チョコレートの「ゴディバジャパン」(東京都港区)だ。
MBKは傘下のVM2ホールデイングス(現オーキッド)を通じて19年にゴディバの日本、韓国、オセアニアの事業とベルギーの工場をトルコの食品大手「ユルドゥズ・ホールディング」から合計1100億円超で買収した。買収対象の売上の9割以上は日本が占めるとされた。
当時ゴディバは日本で百貨店中心の戦略を転換し、コンビニに商品を置き始めるなど、より身近なブランドとして購入者のすそ野を広げる戦略が当たり、業績が急拡大していた。ところが買収の翌年からコロナ禍になってしまったこともあり、成長が鈍化。近年ゴディバジャパンの売上高は400億円台で足踏みしており、商標権やのれんの償却費が毎年130億円規模に達するため多額の赤字を垂れ流している。25年12月期は91億円の最終赤字だった。同期の自己資本は78億円あるが、仮に26年も同規模の赤字の場合、債務超過に陥る計算だ。MBKは高値掴みしてしまったのだろう。
信用調査マンは「業績や財務だけではなく、資金繰りも厳しいようだ」と指摘する。バレンタインデーシーズンに年間売上高の実に4割近くが集中する構造のため、年末あたりから在庫の調達を含めた資金負担がかさみ、そのしわ寄せで一部の取引先への支払い期日を「バレンタインデーのあとに繰り延べさせてほしい」などと要請しているようだ。有名ブランドらしからぬ振る舞いに取引先は困惑している。
当然、会社側も売上の波をなるべく平らにしようという苦心の跡はみえる。23年からベーカリー業態「ゴディパン」の出店を進めているほか、最近焼き菓子業態「Gバターズ」もスタートした。
買収時にメガバンクなどから調達したLBOローンの残高は足元で700億円規模とされ、「今年6月に返済期限がくる」(金融筋)という。銀行団はリファイナンスに応じる条件として親会社のオーキッドが23年に買収した同じ高級チョコ「ピエール・マルコリーニ」の売却を求めているのではないかとの観測も浮上している。本誌はゴディバジャパンとMBKに支払い延期要請や財務テコ入れ策の有無などについて質問状を送ったが期限までに回答はなかった。