イーロン・マスクがサムスンと仲違い/米インテルに肩入れ「株価3倍!」

AI半導体巨大工場の計画をぶち上げたイーロン・マスクがパートナーにしたかったのは、サムスンだったのだが…

2026年6月号 BUSINESS

サムスンに袖にされたイーロン・マスク氏(HPより)

半導体業界のかつての盟主、米インテルがにわかに復権してきた。2026年に入り、株価は3倍近く上がり、約40年ぶりの水準にある。その背景にあるのが巨大顧客の存在だ。5月8日に米アップル製品に搭載する半導体の一部をインテルが製造することが報じられた。4月には「超大物顧客」を獲得した。起業家のイーロン・マスクだ。AI(人工知能)ロボットなどの実用化に向け、ロジックやメモリーを製造する計画をぶち上げ、製造パートナーにインテルを選んだ。

マスク氏が経営する宇宙開発企業スペースXが初期段階で550億ドル(約8兆6000億円)を投じ、テキサス州オースティンで半導体工場「テラファブ」を建設。回路線幅2ナノメートルのロジック、メモリー、先進パッケージ技術を一つの工場で完結する構想だ。AI半導体を設計する米国企業にとって、ファウンドリー(半導体受託製造)大手の台湾積体電路製造 (TSMC)が唯一の製造委託先。供給ひっ迫に業を煮やしたマスク氏は、自社での半導体計画を始動させた。自前で半導体製造技術を持たないマスク氏はインテルと協力することで、テラファブを実現する意向だ。

ある業界筋は「実は(マスク氏にとって)最初のパートナー候補はサムスンだった」と打ち明ける。サムスンとマスク氏の関係性は深く、2033年12月末までの製造について、約22兆8000億ウォンで契約を結ぶなど、ロジック半導体の製造で協業してきた。「テスラからの価格は安い」(サムスンのサプライヤー)が、ファウンドリー事業で大口顧客の確保に苦しんできたサムスンにとって、テスラは救いの神だった。

サムスンは米政府の補助金を得て、テキサス州に先端工場を建設しており、今年4月から製造装置の搬入を開始した。マスク氏は「テイラー工場を『よこせ』と持ちかけた」(業界筋)。投資はマスク氏が行い、工場の運営をサムスンに依頼する提案だったようだ。もちろん自社の製造で使う方針のサムスンは拒否。マスク氏はインテルとの連携に切り替えた。

インテルは2010年代に10ナノメートル世代の量産で躓き、TSMCに業界の盟主の座を明け渡して以降、苦戦が続いてきた。シェアを持つサーバー向けの半導体でも米エヌビディアや米AMDの攻勢を受け、業績が悪化。リストラに加え、ドイツなどで計画していた工場建設も見直した。同社のサプライヤー関係者は「当面の設備投資は期待できない」と話す。今回、マスク氏との協力で、工場稼働率が低迷する中、持て余している先端世代の人員を維持する効果が期待できる。

日系サプライヤーにとっても恵みの雨だ。シリコンウエハーのSUMCOや露光装置のニコン、洗浄装置のSCREENホールディングス、検査装置の日立ハイテクなど、インテル依存の高いサプライヤーは多い。日系サプライヤーは、もともとインテルとの協業で技術力を高め、韓国や台湾の半導体サプライチェーン(供給網)に参入してきた経緯がある。設備投資の低迷が続く同社にマスク氏が「パトロン」となり、投資が進めば、日系サプライヤーも恩恵を享受できる。

とはいえ、先端半導体工場のハードルは高い。サムスンやインテルは3ナノメートル以降の量産化に苦戦し、先端ファウンドリーのシェアはTSMCの独壇場が続く。「二番手」の半導体をパートナーにする計画の実現は見通せず、必ずしも成功するとは限らない。さらに、気まぐれのマスク氏がパトロンとなり、振り回されるリスクもある。マスク氏は果たして、インテルの救世主となるのだろうか。

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