2026年6月号 BUSINESS

三菱UFJに追いつくどころか
3メガバンクの中で、三井住友フィナンシャルグループ(FG)の株価の出遅れが目立っている。2026年5月1日時点の年初来騰落率は、みずほFG17.61%、三菱UFJFG12.23%に対し、三井住友FGは9.92%。3社とも日経平均の18.22%を下回るが、三井住友FGだけが1桁台に沈んでいる。
業績そのものは悪くない。26年3月期は国内の金利上昇の恩恵を受けて、当期純利益は3期連続で過去最高益を達成した。にもかかわらず株式市場の評価が他の2メガに大きく劣後するのは、同社の海外戦略に対する不信感が根強いためだ。とりわけ、米投資銀行ジェフリーズへの出資拡大が最大のネガティブ材料になっている。
三井住友FGはアジアでの「マルチフランチャイズ戦略」を掲げ、インドネシア、インド、ベトナム、フィリピンなどで現地金融機関への出資を加速させてきた。だが、アジア戦略の象徴ともいえるベトナムで躓き、25年3月期に1350億円もの減損損失を計上。早くも大きな傷を残した。
米国でも誤算があった。23年7月にデジタル専業の「Jenius Bank」を立ち上げ、顧客基盤を広げようとした。ところが、結果は赤字続き。「三井住友FGが抱えるみんなの銀行」と揶揄される中、26年1月に閉鎖を決定。そのうえ米商業銀行の「SMBC MANUBANK」自体も24年、25年ともに約1億7000万ドルの赤字に沈み、同社のコマーシャルバンキング事業を地元のBank of Hopeに売却すると公表(26年4月発表)している。
そこに、ジェフリーズへの出資拡大という新たな火種が加わった。戦略的提携を結んできた同社への経済的持ち分を20%まで引き上げる追加出資だ。だが、この勝負手に市場は懸念を募らせている。「ジェフリーズはプライベートクレジットの火薬庫」(米市場関係者)と見られているからだ。
例えば、昨年9月に起きたプライベートクレジットの代表的な破綻事案である米ファースト・ブランズをめぐっては、ジェフリーズが約7億1500万ドルものエクスポージャーを抱えていることを明らかにした。今年2月に破綻した英住宅ローン金融会社MFSでも、ジェフリーズは約1億ポンドのエクスポージャーを持つと報じられている。
MFS問題では、三井住友FGも傷を負った。MFSのエクスポージャーを210億円も抱えていたのだ。
市場の疑念を受けて、ジェフリーズの株価も急落した。25年9月23日に一時71.04ドルだった同社の株価は、26年3月12日には一時35.53ドルまで下落。わずか半年で半値に沈んだのだ。
仮にプライベートクレジット問題が杞憂に終わっても、ジェフリーズ出資には別の疑念が残る。「相手が小粒すぎる」という根本的な問題だ。
かつて三菱UFJFGは、リーマンショックで深い傷を負った米モルガン・スタンレーに出資し、大きな果実を得た。多額の持分法投資利益だけでなく、グローバルな証券・投資銀行ビジネスを広げる基盤にもなった。
株価の下落局面で米投資銀行に出資する姿は、三菱UFJFGに重なる。だが、ジェフリーズと米金融を代表するモルスタとでは、役者が違いすぎる。純営業収益はモルスタのわずか10分の1。ジェフリーズの立ち位置を日本市場での証券会社に例えれば、「岡三証券クラス」(同)。これでは業績拡大や利益貢献を期待するのは端から難しい。
市場が嫌気しているのは、期待値の乏しいジェフリーズに資本を振り向けることで、株主還元に回るはずの余力が削がれることだ。海外戦略で誤算が続けば、三菱UFJに追いつくどころか、みずほの猛追を許すことにもなりかねない。